電撃ドットコム > 電撃オンライン > レビュー > 『機動戦士ガンダム 一年戦争』

◇ レビュー ◇
電撃オンライン編集部がオススメするソフトを個性的なレビュアーがアツく語ります!
タイトル
機動戦士ガンダム 一年戦争
レビュアー
Z佐藤

あらゆる部分にこだわり&職人芸が満載!
ナムコの手がける『ガンダム』は、やっぱひと味違う!!(5,121文字)

 「機動戦士ガンダム(以下ガンダム)」というアニメをゲーム化した作品は、これまでバンダイ開発+バンダイ販売といった形態でユーザーの手元に送り届けられていた。だが時代が移り変わり、バンダイとの共同開発という形態で他のメーカーが「ガンダム」ゲームの開発に取り組み始めた。その第1弾となる作品が、2001年12月6日にカプコン開発+バンダイ販売で発売されたアクションゲーム『機動戦士ガンダム 連邦VS.ジオン』シリーズである。この作品は対戦プレイを主眼とした内容になっていて、2対2のチーム制、戦力ゲージで決まる勝敗、コストによってモビルスーツ(以下MS)の性能差を設定するなど、オリジナリティあふれるシステムを多数搭載。ACTの開発をオハコとするカプコンらしさを前面に出した作品に仕上がっていた。これに続いて2004年9月、数々の名作を世に送り出しているゲーム業界の老舗ナムコもついに始動! バンダイとの共同開発プロジェクト「PROJECT PEGASUS(プロジェクトペガサス)」を発足し、アニメで描かれた“一年戦争”をまるごと体験できる「ガンダム」ゲームの開発がスタートした。それが2005年4月7日に発売された『機動戦士ガンダム 一年戦争』なのだ。はたしてナムコは「ガンダム」という作品をどのように捉え、どう表現しているのか? バンダイやカプコンが開発した「ガンダム」ゲームと異なる部分や注目すべきポイントなどを中心に、その秘められた内容を掘り下げていこう。

●地上戦、水中戦、宇宙戦、さらに射撃戦も
  網羅した正統派「ガンダム」の完全版
 アニメで描かれた“一年戦争”をモチーフにした正統派の「ガンダム」ゲームを開発するにあたって、バンダイはストーリーを2つのパートに分けるという手法をとった。それが、地上戦だけを再現した『機動戦士ガンダム』(ステージ1「ガンダム大地に立つ!」からステージ9「ジャブローに散る」まで)と、宇宙戦だけを再現した『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』(ステージ1「強行突破作戦」からステージ8「ア・バオア・クー(後編)」まで)である。だが今回の最新作『機動戦士ガンダム 一年戦争』は、その長き戦いを1本のソフト(全28ミッション)に集約! 水中戦に加えて「ガンダム」ゲーム史上初となる射撃戦もプラスした、集大成的な作品として完成させたのだ。しかも各ミッションのこだわりもハンパじゃない! サイド7を原寸で表現したり、フィールドにはアニメとまったく同じ建物や道路を配置していたりと(詳細は下の項目を参照)、かなり力を入れている。それに射撃戦のバリエーションも豊富で、左舷機銃を操作してドップやマゼラ・アタックを迎撃したり、連邦軍制式拳銃を使ってホワイトベースに侵入してきたジオン軍兵と死闘を繰り広げるなど、どれも凝った作りで魅力的。どうしてもMS戦がメインとなるタイトルだけに戦いが単調になりがちだが、その合間にこういった形式の戦いを盛り込んだのはアイデア賞モノかも。新鮮で非常に好感が持てるところだ。

●各ミッションの作り込み&細部へのこだわりにカンゲキ!
 まず驚かされたことが、地上ミッションのフィールド。その部分には、ナムコが『エースコンバット』シリーズで培った地形描画技術が採用されており、例えばミッション1の舞台となるサイド7は長さ15㎞、直径6.4㎞という“実寸”で描かれている(実際にその広さを動き回れるわけではないが、そうして描くことで背景となる部分の見え方が格段にリアリティを増し、「コロニーの内部」という雰囲気を再現している)。しかも、フィールドに存在する建物や道路などもアニメに忠実に配置されていて、ファンなら判る! ファンにしか判らない!! ならばオレにも判る~~!!!! といった細かいこだわりがドッサリと盛り込まれているのだ。その中でもお気に入りの配置物の1つが、ミッション16「復活のシャア」のフィールドに建っているミハルの家。ちゃんと通信用のバルーンも再現されているのがポイントかな。初めて発見したとき、感動のあまり思わず家に向けてビームライフルを連射したくらいだ(つ、つい……)。これに続いてもう1つ気に入っている配置物が、ミッション19「ジャブローに散る(後)」のフィールドにあるジム工場(アニメでキッカが「ガンダム工場」と言ってた建物)。ジャブローのフィールドを探検していたら、大きな建物に細長い窓が空いているのを偶然発見。何かと思って前進すると視点がグイッと窓に近づき、ズラズラ~っと並んでいるジムが見えたのだ。むむむ……、うぉ~~、オレの中の破壊衝動がぁぁぁ、バヒュ~ン、バヒュ~ン! ……って、やっぱ壊れるわけないか。ジャブローといえば修理が完了したホワイトベースとホワイトベース級のサラブレッド(これも3Dモデルにあった)もあったっけ。あと、接近すると地面からピョコ~ンと飛び出してくるアッガイ(アニメでカツ、レツ、キッカの3人組が頭の上を渡った)もいて、その先にジム工場があったりと、まさにアニメそのままの配置になっている。なんだかジャブロー内部はちょっとしたテーマパークのようで、人間サイズで探索したくなった。
 そのほか作り込みの細かさでは、特定のミッションに登場するキャラの3Dモデルも見どころのひとつ! ミッション16では、ホワイトベースを降りたカイがバイクに乗って戻り、ガンタンクに乗って出撃するというイベントが発生する。最初のプレイでは会話のみのイベントだと思ってまったく気づかなかったが、クリアしたあとにモデルビュアー(※1)を見てビックリ! なんと、バイクに乗っているカイの3Dモデルがあったのだ。これを見てミッション16にカイが出現することを確信し、フィールドをくまなく調べてみたところ……、いた~~~っ! 小さなカイがバイクに乗って走ってる~~!! 興奮のあまり勢い余ってビームライフルと頭部バルカンでカイを攻撃してみたが、残念ながら進路をふさぐことはできなかった(当然か……)。カイの3Dモデルのほかに、もうひとつモデルビュアーで目を引いたのがミハルの吹っ飛びシーンの3Dモデル。やはりこれがあるなら……と思い、イベントが発生するミッション17に急行した。だが空母の甲板上から空を飛ぶガンペリーは見えたが、ミハルの姿は確認できない。う~~、いやきっといる。あのガンペリーに乗ることさえできれば! と考え、何度かチャレンジしてようやくガンペリーに乗った。すると……、うわ~~、いた! ちっちゃい人が……、ちっちゃい人がガンペリーから海に落ちていく~~! その様子にビームライフルを撃つのも忘れて見入ってしまった。う~ん、スゴイ!

●最初は戸惑ったが、慣れると心地よい操作システム
 さすがに初めて触ったときは「左スティック:移動、右スティック:視点の上下・方向転換、L1ボタン:ダッシュ、L2ボタン:ジャンプ、R1ボタン:ビームライフル、R2ボタン:ビームサーベル、左右スティックの押し込み:頭部バルカン」という操作システムに困惑。○×△□ボタンを使わない操作なんて考えられなかったので、いきなり操作設定を変えようとまでした。だが、各ボタンの用途は変えられても操作に使うボタンは変更できなかった。う~ん……、それじゃ初期設定でやってみよう! と始めてみたところ……、いけるいける! 慣れるほどにスゴイ操作もできるようになって、いまでは背後から迫ってくるミサイルでも回避できたりするから、自分でもオドロキだ。まぁ、回避できるように作られているんだけどね。そう錯覚させてプレイヤーが気持ちよく感じられるうになっている点がグッド! つまり自機の移動スピードと、ミサイルの接近スピードの調整が絶妙なのだ。このへんに、ナムコがフライトシミュレータ『エースコンバット』シリーズで培った空中戦のノウハウも活かされているのかも。そのほか敵を正面に捕捉するというロックオンのシステムもイイ感じ。敵が動いているとビームライフルが当たりにくいが(当然か……)、それによって回り込んで撃つ、近づいて撃つなどの戦法を駆使することになり、プレイヤー側で戦いを組み立てながら進められるようになっている。ロックオンすれば100%攻撃が当たるようになっていたら、プレイヤーはすることがなくなるからね。ただ、ハイパーハンマーやビームジャベリンといった武器が登場しないのはちょっと残念(ゴッグにハイパーハンマーを取られたり、ガウをビームジャベリンで落としたりしたかったな~~……)。ミッション開始時に武器が選べたりしたら、もう少し戦い方のバリエーションが広がったかも。ここで突然だけど、ワンポイントアドバイス! 『機動戦士ガンダム 一年戦争』をプレイする上で欠かせないテクニックといえば“スラスターターン”。これは素早く方向転換を行いたいときに役立つもので、右向きターンの場合は「左スティックを左+右スティックを右+L1」、左向きターンの場合は「左スティックを右+右スティックを左+L1」という操作で行える。地上戦、宇宙戦、水中戦とあらゆる戦場で役立つテクニックなので、必ず会得しておくように。そのほか、その場を動かずに素早く方向転換したいときは「左スティックを右か左+L1(軽く)」という小ジャンプ方向転換も役立つので活用してみてほしい。

●メモリアルアクションで、あの感動が再び!
『機動戦士ガンダム 一年戦争』の見どころの1つとなっているのがメモリアルアクション。これは特定のミッションでアニメと同じ行動をとると、アニメの名場面を再現したデモが流れるというもの。その再現度は、根本的にCGモデル自体の完成度が高いこともあって、どれもピカイチ! カメラワークもアニメを研究し尽くしているようで、ハイクオリティの映像でアニメの名場面が楽しめるようになっているのだ。その中でも気に入っているメモリアルアクションが、2本のビームサーベルでギャンを撃破するシーン。2刀流のガンダムがカッコイイ! これが一番好きかな。ちょっと残念なのは、再現されているメモリアルアクションの数が少ないところ。大気圏突入とかは、ガンダムが単独で大気圏に突入するパターンとザクIIを撃破せずに大気圏に突入するパターン、1つのミッションに2つあったりしてもよかったかも。あと、最終決戦のメモリアルアクションが用意されていないのも悲しい。ジオングとの対決シーンは屈指の名場面のような気がするが……。ただ、メモリアルアクションの発動条件はどれもそれほどシビアでないため、少しでも「ガンダム」の知識を持っていればすべての名場面を堪能できるはず! アニメと見比べてみるのも楽しそうだ。

●個々の完成度が高いがために、
  もっと遊びたいという気持ちがつのる……
 ファンとしては用意されていてほしいが、なくてもそれほど支障はない……。それを盛り込んだり、実現させるかどうかはメーカーの判断しだい! 「ガンダム」という作品にはそういった要素が多いだけに、どこまでやっているのか? というところにファンの注目が集中する。今回の作品は「ガンダム」の世界を体感できるシミュレーターとしての完成度は申し分ない。アクションゲームとしても水準以上だと思うのだが、やはりプレイモードがメインのストーリーモードだけっていうのは寂しい(いちおう好きなミッションを選んでプレイできるフリーミッションもあるが、1ミッション終了制なので気持ちが切れてしまう)。難易度はNORMALモードとHARDモードの2種類があり、HARDモードだとNORMALモードには出現しない敵が出現したり、セリフが変わったりといった演出はあるものの、基本的には同じ。隠し機体も用意されているが、それを使えるのはHARDモードをクリアしたあとで、しかもフリーミッションでしか選べない。あと、やっぱりせっかくガンダムをうまく操作できるようになっても、そのテクニックを使う場がちょっと少なかったことが残念だったかな。個人的には“一年戦争”という範囲でくくるなら「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」とか「機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争」あたりまで盛り込んでほしかったかも。全体的なボリュームについては少々辛口なことを書いてしまいましたが、細部へのこだわりはファンを満足させるに十分な内容であることは間違いない。ファンなら1度は触っておきたい作品である。それと今回が「PROJECT PEGASUS」の第1弾ということで、第2弾、第3弾の作品にも大いに期待したいところだ。

 
画面写真

レビュアー紹介

Z佐藤
 蛍光灯のヒモを引っ張ったら根元からブチ~ンと切れた。下からはヒモの端が見えない……。ぐはっっ! もしかしてコレって分解して直さなくちゃいけないのか!? というハプニングに見舞われて苦しんでいる電撃PSのライター。得意なのはACTだが、好きな作品ならジャンルを問わずに手を出す。でもRCGだけは苦手(緊張が長続きしないから)。

●好きなゲーム
『MGS』シリーズ
『ロックマン』シリーズ
『トロンにコブン』
『キングダムハーツ』シリーズなど


機動戦士ガンダム 一年戦争
パッケージ
●機種:PS2
●メーカー:バンダイ
●ジャンル:ACT
●価格:7,140円(税込)
●発売日:2005年4月7日

(C)創通エージェンシー・サンライズ (C)BANDAI 2005 (C)2005 NAMCO LTD.

■ソフト紹介ページ

今すぐ購入!

【注釈】
(※1)ミッションに登場した3Dモデルが登録され、自由に観賞できるモード。モードセレクト画面でアーカイブを選択