SOFT インタビュー
Xbox『幻魔鬼武者』はPS2『鬼武者』とどこが違うのか?
“Xboxユーザーをターゲットにした”と語る稲船氏の真意がここに明かされる!
タイトル カプコン・稲船敬二氏ロングインタビュー
「Xboxを買うのは昔のサターンユーザーに近い人たちなんじゃないか」

PS2で初のミリオンセラーを達成した超人気作『鬼武者』が、今度はXboxで登場する。『幻魔鬼武者』とタイトルを一新し、そのゲーム性にも変更が加えられているというこの作品の全貌は、はたしてどうなるのか。について、カプコン第2開発部部長にして、『鬼武者』シリーズのプロデューサーである稲船敬二氏に、詳しく語ってもらった。 

■タイトルに『幻魔』が加わった理由

――Xbox版の『鬼武者』は新解釈ということですけども、そのタイトルに「幻魔」と名付けられたのは、いったいどういうニュアンスなんですか? 

稲船:
タイトルを決める上でまず、これは『鬼武者』なんだよ、っていうのをはっきりさせたかったんです。たとえば、『鬼武者・外伝』ではないわけですよ。外伝でも新しい作品でもなくて、やっぱり『鬼武者』であるっていうところが大事なわけで。そういったときに、今回のXbox版のゲーム性を表すためには、頭に「幻魔」とつけるのがいいのかなって思ったんです。“幻魔”っていうのはつまり、敵じゃないですか。それに対して“鬼武者”っていうのは、左馬介が鬼武者に成り代わるっていうことで、味方の側というかプレイヤーの側じゃないですか。敵と味方、幻魔と鬼武者っていう。ちょうど映画の『クレイマー、クレイマー』(※1)みたいな感じですよね。あれも原題は、「クレイマー VS クレイマー」ですから。『幻魔鬼武者』ってタイトルにすることで、幻魔と鬼武者の対決っていう部分を匂わせつつ、世界観を崩さずに“鬼武者”っていうのを前面に出していけるかなぁと思ったんです。

■難易度の高いゲームが開発者の理想?

――いったん完成した大ヒット作に、もう一回手を入れ直すことになりますよね。そういう、作品をもう一回いじるっていうことは、クリエイターにとってどういう気持ちなんですか? 

稲船:
かなり嬉しいですね、それは。PS2の『鬼武者』に対して納得してない部分があるっていうわけじゃないんですけど、PS2版に関しては、数を売っていくためにやらなきゃいけないことっていうのを、かなり意識したつもりなんですね。だから、特に難易度に関しては、すごくセーブしたんですよ。それはスタッフの中でもそうだし、僕のほうからも、かなりブレーキをかけてセーブさせた部分があるんです。

――ということはPS2の時も、開発している段階では、けっこう難易度が高かったんですか? 

稲船:
最初にスタッフから上がってくるものっていうのは、けっこう遊びがいのある、難易度の高いものが、やっぱり上がってくるんですよ。でも、それだと一般のユーザーの人たち、つまりふだんゲームをあまりやらない人たちが、すぐに投げ出しちゃうんですよね。そこでじゃあ、もうちょっとこうしていこう、ああしていこうって、どんどん難易度を下げていくわけですよ。『鬼武者』に限らず、ゲームを作っていて最初に出てくるものっていうのは、やっぱり相当に難しいんですよね。『ロックマン』なんて難しい、難しいってよく言われるんですけど、最初に僕らが納得して作り出したものっていうのは、製品版よりもっと難しいわけですよ。それを営業サイドだとかいろんなところの意見を聞いて、泣く泣く難易度を下げて世に出したら、それでも難しいって言われて「え〜っ?」みたいな(笑)。

――それはなかなかキビシイですね。

稲船:
ゲームって、ずっと作ってるあいだに難しい部分も慣れてきちゃうんですよね。でも、一般のユーザーさんは初めてそのゲームを遊ぶわけですから、僕ら開発スタッフとはスタート地点がぜんぜん違うじゃないですか。自分たち開発者が面白いと思うのは、やっぱり難易度が高くてやり応えがあるものなんです。それをやれる機会ができたわけですから、いったん完成したゲームをもう一回いじるということは、ノーではないですね。むしろ嬉しいですよ。しかもそのいじり方っていうのが、敵を硬くしましょうとか、こっちの耐久力を減らしましょうとか、そういうことじゃないわけですよ。そういう形で難易度を上げたり下げたりするわけじゃなくて、難易度っていうのは、もっと全体的に見ていくものですから。そういった部分での調整が、今回のXbox版ではできたんですよ。

■瞬間的にプレイヤーが考える要素を増やす

――単にダメージの数値を変えるわけじゃない形での難易度調整というのは、具体的にはどういうものなんですか? 

稲船:
ひとつのゲームの中で、いろいろ考える要素ってありますよね。PS2の『鬼武者』の場合は、一瞬一瞬で考えなければいけない要素を、わざと減らしてるんですよ。刀で斬るか、魂を吸うか、その2つだけを考えればいいっていう形ですね。斬ること自体もそんなに難しくなくて、ボタンも1個だし特にコマンド技があるわけでもない。それでもピンチになったら、じゃあ戦術殻を使いましょう……っていうふうに、その瞬間で考えなければいけないことの数を減らしてるんですよ。今回の『幻魔』では、その考える個数をまず増やそうと。
 魂が出ました、じゃあそれを吸えばいいんだ、っていうだけじゃなくて、緑色の魂が出ました、それを敵に吸われたら強化しちゃうからどうしよう、って、そこまで入れてるわけですよ。斬るってアクションに関しても、普通に斬るだけじゃなくて溜めて斬ることもできるんです。ここは溜めておいたほうがいいのか、そのまま普通に斬ればいいのか。戦術殻に関しても、『幻魔』ではボタンを溜めることによって、3段階あるパワーを変化させることができるんですね。PS2版だと戦術殻は、MAXまでレベルを上げたら、ボタンを押すといつでもレベル3の雷が落ちてましたよね? でも、レベル3の雷をザコに落とすのも、もったいないじゃないですか。『幻魔』では、レベル1の戦術殻でよかったら、ボタンをちょっとだけ押せばレベル1の技が出て、エネルギーもちょっとしか減らないわけです。

――考える要素が増えたことで、プレイヤーが何をすればいいか悩むことも増えるというわけですね。

稲船:
でも、そういった要素をライトユーザーも含めた100万人に考えてもらおうというのは、ゲームの作り方としては間違った方向なんですよ。そのあたりに注意して作ったのがPS2の『鬼武者』なんですが、今度の『幻魔』ではそのブレーキを外して、プレイヤーの好きに遊んでもらおうっていうコンセプトですね。要は、レーシングカーみたいな感じなんですよ。『鬼武者』は乗用車としての乗り心地を考えて、運転のし易さと速さのバランスを一番に考えたんだけど、『幻魔』はレーシング仕様になっていて、乗りこなすのがかなり難しい。でも、いざ乗りこなせるようになったときの楽しさは、乗用車よりもずっと高くなってるっていう形ですね。



稲船敬二さん

カプコン第2開発部部長にして、『鬼武者』シリーズのプロデューサー。硬派なアクションゲームの制作には定評があり、代表作に『ロックマン』シリーズも。



『幻魔鬼武者』
■メーカー:カプコン
■対応機種:Xbox
■発売日:2002年2月22日
■価格:未定
(c)CAPCOM CO.,LTD


※1 『クレイマー、クレイマー』
1979年製作のアメリカ映画。ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの演じるクレイマー夫妻が、一人息子の親権を巡って離婚裁判を争うという内容。

■Xboxを買うのは、いったいどういう人なのか?

――Xboxの『幻魔』を、PS2の『鬼武者』のように乗用車じゃなくて、スポーツカーにするっていう発想は、いったいどこから来ているんですか? 

稲船:
まず最初に、Xboxってどういう人が買うんだろう? って考えたんです。Xboxに限らずどんなハードでも、そのハードをどんな人が買うんだろう、どんな人がそのハードで動くゲームを遊ぶんだろうって考えることが、すごく重要だと思うんですよ。それで、Xboxはどういう人が買うんだろう? っていうことを僕が勝手に想像したときに、Xboxだけしか持ってないっていう人はやっぱり少ないんじゃないかと思ったんですよ。ゲームがすごく好きで、もうPS2も持ってるんだけど、もっと違う刺激が欲しいとか、新しいハードに対してすぐ反応するとか。そういう人たちがXboxを買うんじゃないかと、僕は勝手にそう思ったんですね。あとは、昔のサターンユーザーに近い人たちなんじゃないかと。DCではなくて。

――PSに対するサターンっていう感じで、ちょっとアンチっぽいスタンスを標榜している、濃いゲームファンのイメージですね。

稲船:
そういう、ちょっと斜に構えた人たちに、「本当の『鬼武者』はこっちなんだよ」って言ってもらえるようなものにできれば、けっこうイケるんじゃないかなあって、僕なりに考えたんですね。PS2で出たものと同じバージョンを作るっていう方法もあるんだけど、それではぜんぜんインパクトがないじゃないですか。作る側は楽ですけど(笑)。やっぱり、Xboxだから楽しいっていうものを作りたかったんですよ。PS2の焼き直しっていうふうに見られるのは、ある意味で仕方ないなとは思いますけど、実際にゲームを遊んでくれれば、「ぜんぜん違うよ」って言ってもらえる作品になってるかなとは思ってます。『鬼武者』であることには変わりがなくて、まったく違うというものではないんですけど、遊んでいる感覚が違うというところには、到達できているかなあと。ただ単に敵キャラが増えたとか、ゲージが増えたとかそういうことじゃなくて、遊びの感覚が違うなぁって受け取ってもらえたら、有り難いですね。

――同じ『鬼武者』なんだけど、ゲーム性がまったく違うゲームになっているということですね。

稲船:
PS2の『鬼武者』に比べると、すごく遊びごたえがありますよ。開発スタッフが上げてきたものを僕が最初にチェックしたときも、すごく面白かったんですよ。すごく面白くて気持ちよくて、でもそこで僕から指示を出したのは、僕程度のレベルの人間が遊んで気持ちいいのなら、現場のスタッフにはイージーすぎるだろう? 難易度がまだ遠慮してるよ、と。君らがプレイして面白いと思うものを、遠慮せずに作れよと、そう言ったんです。だから今、難易度を2段階にしようって話をしてるんですね。僕が面白いと思ってるバージョンをイージーモードにして、それよりさらに一個上の難易度のバージョンを、ノーマルモードにしたいと思ってます。もっとも、そのイージーモードにしても、PS2版に比べればぜんぜんイージーじゃないんですけどね(笑)。

■PS2の『鬼武者』をプレイした人のほうが、より楽しめる

――そんなに難易度が高いと、『幻魔』で初めてプレイする人は、けっこう苦労するんじゃないですか? 

稲船:
でも、『鬼武者』をまったく遊んだことがなくて『幻魔』をプレイする人っていうのは、少ないんじゃないかなって思ってるんですね。もちろん、そういう人もいるとは思いますけど。ただ、『鬼武者』をぜんぜん知らなくて『幻魔』を遊ぶ人よりも、PS2の『鬼武者』を一度遊んでいて、それから『幻魔』を遊ぶ人のほうが、より楽しめると思いますよ。『鬼武者』を遊んでいる人は、ここにアイテムがあるとか、このルートで行けばいいとかってことを、すでに覚えちゃってるじゃないですか。『幻魔』では、それがすでに罠なんです。『鬼武者』のときの記憶でプレイヤーが誘導されてるから、じゃあ逆にここに敵をセットしておこうとか、開発側としてはそういう作戦が立てられるんですよ。
 言ってみれば、ある種のパロディですよね。初めてのゲーム、たとえば『鬼武者2』を作ってる場合には、プレイヤーがどう動くか予測できないじゃないですか。迷ってからこっちにくるかもしれないし、必要な装備を持たないで部屋に入ってくるかもしれない。逆に慎重になって、体力を満タンに回復してから入ってくるかもしれない。でも、「この部屋には薬草があった」なんてことを覚えてたら、体力の残りがなくても平気で部屋に入っちゃいますよね。そうすると、『鬼武者』ではいなかったはずの敵がいて「うわ〜っ!」ってなったり、そういうことを今回の『幻魔』ではやってるんですよ。

――それはまた、楽しみでもあり怖くもありっていう感じですね。

稲船:
怖いというか、ホラー感が『鬼武者』よりも強くなったっていうのは、よく言われますね。プレイヤーがパニックを起こすようなシチュエーションって、けっこう多いと思いますよ。敵も強化しちゃう緑の魂が、一度に3個も4個も出てくることがあるんです。でも、魂って一度に1個しか吸えないじゃないですか。その間に敵にシューッって吸われて、グォーッ! って襲ってきますからね。もう逃げようかと思いますよ。でも『幻魔』というのは、そこで逃げずに立ち向かっていくだけの勇気のある人間が遊ぶためのゲームだと、そう思って作ってますから。ゲームとしてどっちが面白いかって言われたら、たぶん『鬼武者』よりも『幻魔』のほうが面白いと思いますよ。
 ただ完成度の高さでいうと、絶対に『鬼武者』のほうなんですね、それは。よく六角形のグラフがあるじゃないですか。遊びやすさとかお買い得感とか、そういう要素のグラフが六角形の形になってるっていう。PS2の『鬼武者』は、それが綺麗な六角形になるように作ってるんです。それに対してXboxの『幻魔』は、1カ所だけがギューンって突出してる。そういう作り方をしてるんですよ。



■移植とアレンジ、2つの開発チームが作業を同時進行


――カプコンとしても初のXbox用ソフトということになりますが、開発のほうは順調ですか? 

稲船:
かなり順調ですよ。Xboxって、たしかに作りやすいというのはあります。PS2でやろうとした時に1ヶ月かかったことが、Xboxだと3日でできたこともありましたし。まあ、なんでもかんでもそんなに早いっていうわけでは、もちろんありませんけど。
 あと、今回はちょっと面白い開発スタイルを取ってるんですよ。じつは今回、『鬼武者』をPS2からXboxに移植する部隊と、PS2の上で『鬼武者』を『幻魔』にアレンジしていく部隊の、2つの開発部隊を同時に走らせたんです。プログラムのスタッフの中には、新しい技術を学びたいっていう人間が大勢いるんですよ。そういった連中は、Xboxみたいな新しいハードに、すごく興味があるわけです。そこで彼らには、『鬼武者』をそっくりそのままPS2からXboxに移植する作業を担当してもらったんですね。その一方で開発スタッフの中には、ゲームの面白さをとことん追求したいっていう人間もいるんです。彼らとしては、技術の部分に神経を使って、ゲームを作るのに専念できないのはイヤなわけですよ。そこで彼らには、PS2の上でゲームをどう変えていくのか考えてもらう。それで、この2つが同時に完成したら、ひとつに足せばいいっていう形を取ったんです。まず移植して、そこからゲームに手を入れていくって形だと、やっぱり時間がかかっちゃうし。開発スタッフのほうからも、「このやり方のほうが、自分たちでもやりやすい」って言ってくれたんで、かなり効率はよかったんじゃないかと思いますよ。

■『幻魔鬼武者』は『鬼武者』と平行に並ぶ存在

――先程、『幻魔』は『鬼武者』をプレイしていたほうが楽しいっていうお話が出ましたが、その意味で言うと、『鬼武者2』は『幻魔鬼武者』をプレイしていたほうがより楽しめたりするんでしょうか? 

稲船:
うーーん。楽しいは楽しいでしょうけど、『幻魔』に比べると『鬼武者2』のほうは、難易度的な手応えはなくなるかなあ。『鬼武者2』の場合は、ただ単にアクションで攻めていくだけじゃない面白さ、人間を攻略するっていう面白さを入れてるんで、それがまた『幻魔』とは違う味になってると思うんですよ。だから、『鬼武者』があって『幻魔』があって『鬼武者2』があるというよりも、『鬼武者2』はPS2の『鬼武者』からの続きと見てくれたほうが、すごく納得してもらえると思いますけど。

――ではストーリー的には、特に『幻魔』で新しく加わった部分というのはないわけですか? 

稲船:
シナリオに関しては、『鬼武者』からほとんど手を加えてはいないですよ。『幻魔』では新しい舞台として塔が出てくるんで、その塔の中での展開っていうのが加わっているんですけど、これもメインストーリーに大きく影響してくるものではないですから。ストーリーに関しては、『幻魔』だけでしか明らかにならないような話が出てくると、それは結局、『鬼武者』の続きになっちゃうじゃないですか。そうはしたくなかったんですよ。『幻魔』というのはあくまで“もうひとつの『鬼武者』”として、『鬼武者』と平行に並ぶものにしたかったんですね。ですから、ストーリーに関してはあえて同じにしています。だから、いちばんの違いというのは、今までお話ししてきたように、ゲームとしての違いですよ。ゲーム性の部分に関しては、『鬼武者』と『幻魔』と『鬼武者2』、この3つでどれもすべて違ってますね。アクションが苦手な人でもアクションの爽快さを味わえる『鬼武者』、本当にアクションが好きな人に向けた『幻魔鬼武者』、そして“人間を攻略する”といった要素を入れて、アクションだけではない面白さも併せ持った『鬼武者2』と、それぞれ違う遊びを楽しんでもらえると思います。

(文中敬称略)


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