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■ インタビュー ■

本物を求める人のために――さらなる進化を遂げたシステム『龍が如く2』

  前作同様、ゲームというメディアに秘められた新たな可能性を開拓すべく、『2』を制作したという名越氏。舞台や登場人物、そして『龍が如く』の魅力である物語などの世界観に加え、バトル、プレイスポット、サブストーリーといったゲームシステムについて語っていただいた。『龍が如く2』を唯一孤高の存在にすべく、挑戦したこととは?

ボリュームは約2倍
10カ月で駆け抜けた『2』

――前作から1年で続編の発売というのは、最近のゲームとしてはかなり早い印象があるのですが、発売にいたるまでの経緯をまずはお聞かせください。
名越稔洋氏(以下名越、敬称略):せっかく覚えてもらえたタイトルなので、ユーザーさんたちの記憶が薄れる前に、さらにしっかり覚えてもらえるように、早く続編を出したかったというのが、まず1つめの理由ですね。あと続編を作るのならば、やはりより性能の高いPS3で作りたい。でも、当然PS3で作ることになれば、さらに発売が1年以上先になってしまう。そう考えたときに、PS2で年内に発売するのがベストだろうという考えに至ったのが、もう1つの理由です。ただ前作で20カ月ほどかかったことを、前作の発売2カ月後から着手したので、今回は10カ月でやらなくちゃいけなくなって、さらに作業も2倍あって……。どうにかなりましたけど、かなりしんどかったですね。
――前作のユーザーさんの反響はどんな感じでしたか?
名越:ほぼ予想していたような反響が多かったのですが、応援してくれる声が多かったのは予想外でしたね。実際はもっと賛否両論あるかと考えてました。逆にどうしてそういう意見が多かったのかというのも考えて、『2』を作るうえでは参考にしましたし、それがかなり自信にもなりました。
――アンケートの結果などを見ると、ソフトを買ったユーザー層もかなり大人の方が多かったですね。
名越:ソフトを買ってくれた人の95%以上が20代以上。そのうち半分が30代。普段A・AVGを遊ぶ世代と比べれば、かなり世代は上にシフトしているので、狙ったとおりの人に楽しんでいただけたかなと。ただ前作で、普段ゲームを遊ばないライトユーザーの方々が多くプレイしてくださったので、『2』はゲーム的にコアなユーザーの方にもなるべく楽しんでもらいたいと考えてます。コア層に浸透したものを、ライトに戻すという逆の形はよくあるんですけどね。コアな人は確固たるポリシーがあるので、切り崩すのは難しいとは思いますが、難易度を上げるという意味ではなく、ゲームプレイとしての歯ごたえを高めて、満足してもらえるような作りにはしてあります。とはいえ前作を楽しんでもらったユーザーさんを切り捨てる気はないので、ライトなユーザーさんでも普通に超えられる難しさにはしてありますよ。
――『2』でもシナリオの監修に、馳星周さんが担当されていますが、どのような経緯でお願いすることに?
名越:前作からのつながりですね。馳さんも自分がかかわったもので、いい結果が出たので、今回もやる気になってくださいましたし。そういう意味では、自然に決まりましたね。前作では馳さんのチェックでかなりへこんだんですけど、今回は早めに「いいじゃん」と言ってもらえたので、自分たちも成長したのかなと。
――今回はクレイジーケンバンドが楽曲を提供されているとのことですが、こちらの経緯は?
名越:もちろん、ゲームの世界観にマッチするものを使いたいというのがあったんですが、じつは前作のときに1度断られていまして……。プレゼンも何度もしたんですけど、「どういったものなのかが、わからない」と。そんな状況だったのですが、今回もう一度お願いに行ったときは、前作が発売されたあとで、この作品がどういった意図のものなのかをすでに理解してくれていたんです。ただそこからすぐに決まったわけでなく、曲をどう使っていくのか、どういうイメージがほしいからどの曲が使いたいのかなど、ものすごく詰めるのに時間がかかりました。ちなみに提供していただいた曲は、クレイジーケンバンドさんの代表曲「タイガー&ドラゴン」のような感じとは雰囲気が多少異なりますね。どういったものかは、ぜひゲームをプレイして確かめてほしいです。これらの楽曲は、全面に強く押し出すというわけではなく、要所要所の必要な部分で使用していて、そういう意味ではかなりぜいたくな使い方をさせてもらっています。

「生きることは、逃げないこと」
「唯一孤高」という2つのテーマ

――今回の最大の特徴として、東京の神室町と大阪の蒼天堀の2つの街が舞台になるとのことですが、まず大阪という街を選んだ理由は?
名越:同じ舞台というのも考えたのですけど、『2』と呼ぶにあたって、ドラマの部分でもゲームとしての広がりを見せないといけない。そして、リアルさということを保ちながら、みんなに喜ばれることを考えると、やはりメジャーな大阪だろうと。目指していこうとしているシナリオに直結している部分もあるうえ、大阪という街はいじりやすいので。ほぼ必然的にこうなりましたね。
――2つの街というのは、自由に行き来可能ですか? あと2つの街以外に行ける場所もありますか?
名越:お話の流れにそって移動するので、自由な行き来とまではいきませんが、ちょうどよいバランスで移動が可能です。当然自由に行き来できるときも用意してあります。あと神室町と蒼天堀以外の場所も出てきます。お城が出てきたりしますが、今回なりの仕掛けをいろいろ用意してますので、ゲームを見てもらえれば驚くと思いますよ。
――前作の物語には「生きることは、逃げないこと」というテーマがありましたが、今回のテーマは?
名越:「生きることは、逃げないこと」というのは、前作だけのテーマというよりは『龍が如く』という作品全体に対するテーマですね。なので、根底に流れるテーマは同じなんですよ。また、そんなに大々的にはうたっていませんが、「唯一孤高」というテーマも『2』にはありまして。これは『龍が如く』というタイトル自体が唯一の存在、という意味も込めてあるのですが、主人公の桐生だけでなく、すべての登場人物が何者にも似てない、自分だけの生き方を突き通している。そんな人間たちのドラマという意味も込めています。
――前作から1年後が舞台ということで、桐生をとりまく環境もずいぶん変わっているようですが、東城会の状況というのはどのように変化していますか?
名越:元は近江連合の一員だった東城会のトップの寺田が殺されるところが物語の始まりで、トップを失った東城会に近江連合が攻めてくる。そして、その裏側で別の事件の復讐劇が始まりつつある。これがメインの物語の最初の状況ですね。そのなかで桐生が生きていくのですが、前作の物語での重要人物である堂島組長の息子の大吾が出てきて、いろいろなドラマがあったり…。大吾は全般をとおして重要な人物で、ドラマに深みを持たせているいい役どころだと思いますよ。

より深みを増した主人公・桐生
一馬をとりまく登場人物たち

――遥は今回はどんな役どころで?
名越:いやしの存在ですかね。ただドラマとしてかかわってくる部分も結構あり、桐生が悩んでいるところにアドバイスをくれたり、狭山との仲をとりもってくれたり。そろそろオンナになり始めてきた成長っぷりを見てもらえるんじゃないかと。サブストーリーなどでは、芸能界からスカウトされるといったことも……(笑)。
――あと前作をプレイしている人には非常に気になるのが、真島吾朗の存在だと思うのですが、彼は本作にも登場するのでしょうか?
名越:登場します。というか、登場せざるをえない人物ですからね。スタッフも思い入れいっぱいのキャラですから。物語全体で桐生とよい感じでからんできます。
――関西の龍と呼ばれる郷田龍司が桐生のライバルになるとのことですが、彼はどんな人物ですか?
名越:かなりハチャメチャな性格なんですが、ちゃんとしたスジを持っている男ですね。きっと今回の一番人気のキャラは彼になるかなと。準主役なので、後半は桐生が食われないように、シナリオを調節するのには苦労しましたし。キャラが勝手に育つというか、こちらが想像する以上に、いいキャラに仕上がってますね。
――狭山薫も注目のキャラですが、どんなイメージで設定されたのですか? ヒロインという意味では、前作の由美とはかなり雰囲気が違いますが……。
名越:四課=暴力団対策専門の所轄で、とにかく極道が嫌い。で、なぜ極道が嫌いなのかの理由が物語で語られて、それが桐生の追いかけている事件と関係していったり…。ちなみにボク的には、声優の大輝さんが大当たりでした。最初に声を聞いて一発で決めて、プロフィールを見たら元宝塚歌劇団の方で、さらにとても美しい方で、よかったよかったと(笑)。あとは演技がすさまじかったですね。ストイックというのは、こういう人のことをいうんだなと。6時間の録音中、1度もスタジオから出てきませんでしたからね。プロに会ったって気分でした。
――キーワード的に重要になりそうなのが、瓦という刑事ですが、彼はどんな人物ですか。ちなみに声を寺島進さんが担当されていますが、採用された経緯は?
名越:じつは瓦はゲームの冒頭に登場します。過去のある事件の関係者です。彼は公安所属の刑事なのですが、なぜか桐生たちの追っている事件と関係してくる。警察関係の狭山や伊達などと深く関わってくる存在ですね。声を担当された寺島さんに関しては、ボクの飲み友だちでして(笑)。以前からいい役があれば、一度お仕事をお願いできればと思っていて、今回ピッタリな役があったので、お願いすることになりました。
――声優さんといえば、やはり舘ひろしさんも気になりますが、とくにこちらの予想に反して、刑事役ではなく、極道役というのには驚きました。
名越:申し訳ないんですが、ボクにとって舘さんの声って、不良の声なんですよ。世の中が認知しているキャラクター像も重要だと思いますが、『龍が如く』という世界でどう声を使わせていただくかは、よくも悪くもボクのフィルターを通して感じた感覚なので。そっちのほうが世の中にとってもおもしろい提案じゃないかなと。ここで舘さんが刑事役で登場したら、それはそれでいいと思いますけど……やっぱりね(笑)。
――赤井英和さんが刑事役というのも意外ですね。
名越:まず大阪弁ということが絶対的な理由だったんです。あとキャラクターとしてはワイルドで、でもじつは裏側はワイルドだけではすまない。ひとくせもふたくせもある人物ってことで、赤井さんを選びました。
――前作もそうでしたが、声を担当されているのは、声優さんよりも俳優さんが多いようですが。
名越:声優さんの声は、データとしては扱いやすいところもあるのですが、読み方が滑舌(かつぜつ)重視で、フラットな方が多いんですよね。ただ、このシリーズでは、よりリアルな芝居を実現したかったので、滑舌よりも息づかいや独特な間を持っている人がほしくて、主に俳優さんにお願いしました。おかげさまで声もイメージどおりに仕上がりましたね。あと桐生一馬像というのが、いろんな意味で固まってきて、ほかの要素をどう介入させたら、よりおもしろくなるかがわかってきたのもあって、人物像の深みみたいなものもうまく出せているかと。単なる前作の外伝と思われるのがイヤで、『2』という名に恥じないものに仕上げるのには苦労しましたが、その辺りの深みがシナリオにも反映されているので、濃厚なドラマになっていると思います。

より操作感と爽快感を追求した
全方位バトルアクション

――最近ではめずらしいDVD2枚組ということですが、2枚組になった経緯というのは?
名越:単純に1枚に入らなかったんですよ。2層という選択肢もあったんですが、そうするとチェックの作業が何倍もかかって、年末に発売するには間に合わない。それで2枚組という形になりました。物語の中盤あたりでディスクを入れ替える形になります。
――バトルで敵を倒したり、何かイベントをこなしたりして稼いだ経験値で、桐生を成長させるという基本的なゲームシステムは前作と同じですか?
名越:細かい部分では若干の違いはありますが、基本的には同じですね。あと操作に関しても、バトルでのスウェイの方法が変わったぐらいで、イチから覚えなおさなくちゃいけないというレベルの変更点はないですね。
――本作のバトルでは、全方位攻撃というのが特徴的ですが、これはいろいろな方向に自在に攻撃が出せるようになったと考えていいのでしょうか?
名越:そうですね。これに関しては、前作でも議論はあったんですけど、ついてこれないユーザーさんがいたら、こわいよねっていうのがあって。あとはそこまでユーザーさんが求めているのかっていう不安もありまして。それならむしろ前にどんどん突進して敵を倒していく形でいいんじゃないかということで、前作ではああいった形に落ち着いたんです。でも、前作をプレイした人の反応を見る限りだと、思った以上にこなせている印象だったので、より華麗でかっこいいバトルが楽しめる、全方位が攻撃可能な形に変更しました。
――ヒートゲージの形状が変わって、ヒートアクションが連続で出せるようになっているのも、より華麗なバトルを演出する一環ですか?
名越:爽快感や華麗さもそうですし、ヒートアクションの種類も増えたぶん、ためて→発動して→ためて→発動してという流れが前作のシステムでは面倒だったので、連続で発動できる形にしました。これは逆に前作からやっておけばよかった点でもあるんですけどね。
――本作では壁際以外の場所でもヒートアクションが出せたりするようで、ヒートアクションの使用頻度が多くなりそうですが、全体的なバトルの難易度というのは?
名越:ヒートアクションがより使いやすくなったから、それに比例して敵が強くなっているということはないので、難しくはなっていないと思います。どちらかというと、楽しみながらバトルができるという方向に、より大きくシフトしたという感じですね。
――前作では、ストーブに座らせたり、バッティングセンターでボールを顔面にぶつけたりというユニークなものがありましたが、今回も豊富なバリエーションが?
名越:約2倍程度に増えてますよ。あとは仲間との連携攻撃や、外にいる人からラーメンを受け取って攻撃するとか、ギャグっぽいものもあったりします。このあたりは昔ながらの香港映画のノリですね。一方、ムービーシーンのカット割は本格的なハリウッド映画っぽいところがあったりと、いろいろな要素が融合されています。なので、すごくハチャメチャでありながら、エンターテイメント性の高いものにはなっていると思いますよ。ただ、バランスが重要で、ぶっ飛びすぎていると物語の信憑性が薄れてしまう。でも、地味すぎてもつまらない。そのギリギリのところをつくように努力はしましたね。

物語本編を忘れて思わず遊びたくなる
プレイスポットの数々

――街も1つ増えて、プレイスポットの種類はかなり増えているようですが。
名越:お店の種類は非常に増えてますね。やれる範囲でやれるところまでやったという感じです。前作でもそうでしたが、プレイスポットには物語に直結してくるものもあれば、ただ単に遊びというものもあります。情報を手に入れるのに、普通はお金を持っていくんですけど、将棋に勝つことでも情報を聞きだせるなんてイベントもありますね。このあたりは『龍が如く』なりの自由度だと考えてます。ちなみに神室町と蒼天堀のどちらにもある施設もあれば、一方にしかない施設もありますよ。
――あとパチスロに関しては、「獣王」「アラジンA」という実機が打てるようになってますね。
名越:前作でもやるべきだったのですが、ただ借りてやりましたというわけにはいかないので、かなり作業が大変で。どうにか『2』では入れられましたね。
――個室ビデオは、ただ単にプレイスポットではなく、そこで見た映像で技をひらめくといったこともあるとか。
名越:そうですね。ただ個室ビデオだけでなく、物語を解くヒントや自分が強くなるヒントは、いろいろな場所に散りばめてあります。意外なものが意外なところで手に入るからアクセスしたくなるという部分は、前作から引き継がれている『龍が如く』独特の要素ですね。
――ちなみにタイアップのお店もかなり増えていますね。
名越:そうですね。かなり増やしました。ただあれも単純にリアルさを出すために、数を増やしたわけではなくて。例えば、食事をしたいときに、松屋さんの看板を遠くから見て認識できれば、そこに行くと思うんですよ。でも、これまでのゲームだと、近づいてみたり、人と話してみたりして、初めて何かわかる。これがすごくボクはイヤで。あの明かりはコンビニに違いないとか、あそこは怪しい店っぽいので、近寄るのはやめようとか、風景という符号から、何かを感じ取って行動するというゲームを作りたいというのもあって、タイアップは取れるだけ取りました。実際もっとタイアップは取りたかったですし、いっそ街をまるまる再現するのが一番よかったんですけどね。まぁ時間の関係で…。コンビニなどは、じつは全部取れそうだったんですが、諸般の関係で難しかったですね(笑)。
――プレイスポットといえば、本作ではキャバクラの経営ができたり、ホストになったりできますね。
名越:キャバクラに行ったことがある人がいても、経営したことがある人はなかなかいないでしょ。なら入れようと。たまたま知人にこの業界のことを知っている人がいたので、いろいろ参考にしました。以前から水商売を中心にした経営SLGを作りたいと思っていたので、おもしろいエッセンスだけを抽出して作ってみました。
――経営は物語の流れにそって進む感じですか?
名越:物語とは別の流れですね。お店の面倒をこまめに見ていれば、お店に関するサブストーリーはどんどん進みますし、あまりかまわなければ、全然お話は進みません。ペースは自分で決められます。ただそれは店がよくなっていった、売り上げがよくなっていったという単純な流れだけでなく、ここにも深いドラマがありまして。店の女の子が引き抜かれたり、ボーイが店のお金を持ち逃げしたりなんてこともあります。あるタイミングで、別のサブストーリーと話がからんで、何か起こることもあります。ホストに関しても、単純にナンバー1を目指すというだけでなくて、ドラマが用意されてます。これも前作で入れたかった要素なんですけど、結構なボリュームのため容量的な問題でカットに…。
――サブストーリーの量というのはどれぐらいですか?
名越:大小あわせて、前作の2倍ぐらいですね。なので、130近くはあります。ネタを考えるのがとにかく大変でしたよ(笑)。ちなみに前作の登場人物の気になるその後なども、本作のサブストーリーで語られたりします。

ゲームというメディアが
もう1歩先のレベルへ進むための挑戦

――ゲームの新しい表現への1つの挑戦というところで、前作『龍が如く』を作られたと思うのですが、それに対して『2』でのチャレンジというのはありますか?
名越:基本的な狙いは一緒なので、前作以上にそれらをより意識したという感じでしょうか。チャレンジは2つありまして、まず1つめが、日本人の日本人による日本人のためのドラマ作りを、物語やグラフィックなどのあらゆる面でより深いものにするという点。もう1つは倫理の問題。この倫理の問題へのチャレンジは今回、自然にやってあるので、人によってはわからないかもしれませんね。例えば女性の裸が出てくるといったものではないので、わかりやすさはありませんが、要所要所でチャレンジはしてます。
――前作ではさまざまな表現に関して、発売に向けてのやりとりが大変だったとのお話でしたが、前作よりもスムーズにいった感じですか?
名越:同じぐらいですよ(笑)。だって、こっちは前作で表現できた以上のことをやりたいわけですから。ボクは常日ごろから言っているんですけど、単純に場面場面で表現をとらえるのではなく、その場面の前後関係の必然性を考えて見てほしいんです。例えば、シーンとしてどうしても残虐な表現をしなくてはいけない場合があります。しかしそれは前後のストーリーや関係性から考えていただくと、どうしても必然的に起こりうることであって、物語上不可欠な要素である場合もあるんです。今の規制ですとその辺もあいまいになってしまっている。あとは、規制としては問題なくても常識から考えてふさわしくない表現は自分としては認めたくありません。箇条書きの項目だけの規制ではなく、臨機応変な規制ができない限り、いつまでたってもゲームはレベルの低い表現しかできないメディアでとどまることになり、それだからこそ、なにか事件などがあるとすぐに槍玉にあげられてしまう。その繰り返しはもういいでしょう。そういった部分に関しても、今回はまたかなりチャレンジしてます。とくにラストシーンに関しては、一番議論になりましたが、ちゃんと意図を伝えて納得のいくカタチで表現することができました。今回はこのラストシーンを表現するために作ったと言っても過言ではないかもしれませんね。ですから、ぜひたくさんの人にプレイしてもらって、意見を寄せてもらえればと思ってます。
――最後に読者にひとことお願いします。
名越:読み込みの面だけとっても、AVGパートからバトルへの移動が高速化されて、ゲーム内容的に『2』のほうが完成度が高くなっていると思ってます。物語も具体的なことをいうとネタばれになってしまうので言えませんが、人間ドラマとしての複雑さは前作より増しています。それぞれがからみあったりしながら、意外なことが起こったり。でも、ただ意外なものだけをつむいだだけでなく、ちゃんと整合性も考えてます。リラックスして遊んでもらっていいんですが、とにかくすべてのシーンを見てもらいたいですね。
――ありがとうございました。

名越 稔洋 氏

TOSHIHIRO NAGOSHI
総合プロデューサー

名越 稔洋 氏  『龍が如く』の生みの親。前作同様、ゲームというメディアに秘められた新たな可能性を開拓すべく、『2』を制作したという。

『龍が如く2』

龍が如く2

■メーカー:セガ
■対応機種:PS2
■ジャンル:A・AVG
■発売日:2006年12月7日
■価格:7,140円(税込)
■関連サイト:公式サイトセガ

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