──まず川村博士にお聞きしたいのですが、新日本速読研究会とはどういった活動をされているんでしょうか?
川村明宏博士(以下、川村博士):普段は普及活動ですね。本をつくったり、速読に興味を持ってくれた人に教材を供給したりですね。本を読む時間や人数が少なくなってきているという統計があるので、「読書の量を増やすような技術はないか?」と探している人に本を薦めたりしています。本ですと、かれこれ100冊近く出し続けていますよ。主に読んだり書いたり聞いたり覚えたりという基本能力を上げようと日々考えています。
──紹介文を見るとさまざまな肩書きをお持ちですよね?
川村博士:そうですね。本は中身で勝負なんですが、紹介する上でいろいろあったほうがいいというので、持っているものを載せています(笑)。日本ペンクラブ会員は、なろうと思ってなれるものではなく、推薦や出版物に対しての功労が認められないと入れないものです。ペンクラブでは現在、読書を進める活動をしていますが、私も貢献できたらと思い、さまざまなイベントに顔を出しています。
──具体的に、どのような本を出されているのでしょうか?
川村博士:速読が主ですが、視力トレーニングの書籍も出していました。それらは長い間売れていて、ロングセラーになっていますが、時代に関わらずニーズがあるからでしょうね。しかし、少しずつリリースの方法が変化して、書籍からパソコン、そして学校で教育に使ったり、今回のようにDSやPSPで発売されたりとなってきました。
──今回、『耳で右脳を鍛える DS聴脳力(以下、DS聴脳力)』や以前に発売された『目で右脳を鍛える 速読術』シリーズは、どういったきっかけで関わることになったのですか?
川村博士:アメリカでは、ボケに対する認識がすごく進んでいて、ボケないようする教材をつくってくれと言われていたんですよ。聴能に関しては、その能力が衰えることで、ボケているか、そうでないかを判断しやすい。そこで数値にして比較するのがとてもいいんです。しかし、ただテストをして数値を計測するだけではつまらない。それでこういうゲームにしたら、楽しく数値が測れて、ボケも予防できていいのではないかということになったんですね。そういったことが、このゲームソフトを発売することになった理由の1つですね。
大高紘氏(以下、大高氏):経緯的には、こちらから川村博士にアプローチをして、許可を出していただくと同時に、協力していただいたという形ですね。川村博士の理論は、系統化されてしっかりしたものなんですが、今回発売される『DS聴脳力』は、パッケージからしてもかなり砕いた感じにしていて、遊びの部分を強調していますね。
川村博士:このゲームで遊んだ人が、速読に興味を持ら、もっと詳しいのをやってもらえば、伸びもいいと思います。
──今、「川村博士の理論を噛み砕いてゲーム化する」という話になったのですが、『カラス』や『タンクビート』などシューティングやアクションゲームを製作されていたときと比較して、苦労されたことなどはありませんでしたか?
大高氏:そうですね。今まではアクションゲームなどの開発が多くて、こういったジャンルには初挑戦という人間ばかりだったんですよ。戸惑いはありましたね。あと最初に、「聴脳力」や「速読」という理論を理解するのに時間がかかりました(苦笑)。僕らはゲームを好き勝手に作っていたという感じだったので、川村博士に何度もお話を聞かせていただきました。あとは、テレビゲームなので理論をプログラム化するだけでなく、遊びの要素をどのように混ぜていくかという部分を考えるのが大変でしたね。
──制作の期間はどれくらいだったのですか?
大高氏:大体、企画が出て3カ月とかですね。弊社としては、すぐに企画を動かして、「速読力」や「聴脳力」を携帯ゲームで学びたい人に届けようというものがあったので、制作期間は短かったですね。
──『目で右脳を鍛える DS速読術』はその後、PSPでも『目で右脳を鍛える 速読術ポータブル』として発売されましたが、元々移植する予定はあったのですか?
大高氏:最初はDSだけで考えていたのですが、PSPを持っている学生層からの要望が多かったので移植したという形ですね。受験生などから「速読をやってみたい」という声も多く寄せられました。PSP版は成績がグラフになるなど、DS版ではフォローできなかった部分を付け加えました。やはり発売してから、やりたいことや、やれなかったことは出てくるんですよ。今後発売されるものには、以前リリースされたソフトの反省点などはドンドン改善されていくと思います。
──実際にゲームをプレイされて、「読むことや聴き取りが早くなった」という実感はありますか?
大高氏:まず最初に川村博士のPCソフトをやりました。それを元にして、企画が始まり、構成を考えていきました。最初にプレイしたときは理論がわからなかったので、「赤い点が出てきたり、円が広がったりというのは、なんの意味があるのだろう?」と思っていたんですが、川村博士の話を聞いて、理論は理解できました。その後も、いろいろ勉強はしているので、知らないうちに早くなっているのかもしれません。同僚では、効果が出たという人間もいますよ。
──個人差はあると思うんですが、実際に効果が現れるのはどれくらいからなんでしょうか?
大高氏:速読に限っていえば、やってすぐに効果が出る人もいます。3分か5分で理解してしまうという人もいるんです。どちらも即効性があるんですが、1回やっておしまいではなく定着させるために継続してもらうことに意味があるかなと。最初にこの企画の話をしたときに、「受験生が会場に向かう電車のなかでプレイしてもらうのがいい」という実用的な考えもあったんですよ。
川村博士:例えば旅館なんかに泊まったときに、ゲームが置いてあって、試験の前にちょっとそれでリラックスしてもらい、次の日には効果がある。そんなのが理想ですよね。受験に落ちた人の多くは「時間さえあれば」と言うんですよ。だったら読む時間を減らして、問題を解く時間が足りるようにしてあげる。それが目標です。
──『DS聴脳力』を体験したんですが、訓練という気はしませんでした。楽しんでやっているのに、能力が伸びるのか?と逆に疑ってしまうくらいでした。
大高氏:パソコンからの移植部分である「音声を聞くだけ」のモードと、マイルストーンがゲームらしさを加えた「耳トレ」というモードがあるんですよ。そこを比べてもらえると作り方の違いが分かると思います。アプローチは異なっていますが、ちゃんと訓練されています。
川村博士:ゲームで訓練した人も数値は上がっているという統計があるんですよ。最初は、ゲームといっても「まだまだ真面目に」という意識があったんですが、今後はドンドン砕けていくと思いますね。例えば「モグラたたき」をすると速読の能力が身についているとか、ロールプレイングを遊んでいるうちに早く記憶できるようになっているとかですね。でもやっている本人は、なぜ能力が上がっているのかは知らない。今はそういうようなものも計画していますよ。「速読」を欲しがっている人の数なんてそう多くはないんですよ。でもゲームという媒体にすると途端に数が変わります。最終的に、「速読」や「聴脳力」をゲームですべて身につけられたらいいですよね。
──なるほど。知育ソフトのように勉強するソフトを開発するのではなく、ゲームをしていると能力が身に付くソフトを開発していくと。
川村博士:昔はやっていたようなゲームを能力育成用にするのは、そこまで難しくはないと思いますね。そういうのを次あたりにやろうと考えているんですよ。
大高氏:ゲームって意外と速読の理論に乗っ取っていることってあるんですよ。例えば、シューティングゲームだったら、画面全体を見なくちゃいけないとか、あれとかは速読の理論に近いですよね。そういった既存のシューティングゲームだったり、パズルゲームに速読を鍛えられる要素があるので、そういうのをさらに落とし込んでいこうと。「速読を鍛えるゲーム」というのではなく、ゲームをやっているといつの間にか、速読の能力が身につくというようなものを開発中です。
──今回川村博士は、ゲームの監修をやられたということですが、今までと比較して苦労された点などありますか?
川村博士:苦労はマイルストーンさんがやってくれているので、僕は楽ですよね(笑)。昔は全部自分でやらないと気がすまなくて、プログラムもやっていたんですよ。でも毎回OSを買って勉強しているうちに、「もうできているものはあるんだから、プログラマーにやってもらえば楽だな」って思うようになって辞めちゃったんですがね。今回も同じようなことですよね。要素要素のチェックはしますが、あとは作ってもらったほうが楽だということに気が付いてしまってからは、楽させてもらっています。
──(笑)。では、苦労を担当したというマイルストーンさんから、ソフトの魅力を教えてもらえますか?
大高氏:名前の通りなんですが、『DS聴脳力』なら脳を活性化して聴能を、『目で右脳を鍛える DS速読術』や『目で右脳を鍛える 速読術ポータブル』なら速読を、それぞれ鍛えられるということですね。いろいろなトレーニングソフトが出ていますが、これはすごく実用的なところがあります。速読なら本を多く読みたい人に使える能力ですし、聴脳力も脳を含めて鍛えることができる。そういった意味で実生活に役立てることができるのが魅力だと思いますね。あとは値段も抑えてあるので、手軽にやっていただけます。それで合わなければ辞めればいいですし、続けていただいて自己啓発の一貫とすることも可能だと思います。
──最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
川村博士:学習量の差が合格率に出るのは統計で出ています。問題を読む時間を減らせば、普段でしたら学習時間は上がりますし、試験時なら問題を解く時間が増えます。その際に速読を活用してもらったり、脳を活性化させて試験に臨んでもらう。そういったことに利用してもらえたらいいと思います。読む力が増えて、聴く能力が増したら、情報収集能力はやっていない人と比べると、雲泥の差になるでしょう。学生以外の人でも、ビジネスマンなら参考書などを読む時間を短縮できればより多くの本を読めたり、時間を活用できます。ほかにも業務処理能力も上がるでしょうね。
大高氏:マイルストーンとして、『タンクビート』や『カラス』のようなアクションやシューティングゲームはこれからも作り続けていきますが、もう1つの顔として川村博士とのコラボレーションをこれからも続けていきたいと思っています。ユーザーの方には、ぜひプレイしていただき、自己啓発していただきたいです。あとは、「こんな機能を追加してほしい」などの要望がありましたら、ドシドシ弊社の方に意見を送っていただければと思います。これからもいろいろなユーザーの方にアプローチしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
川村博士:私が1つ心配しているのは、安すぎて「こんな値段で出していいのかな?」ということですね。今まで販売してきたソフトで売れているものはもうちょっと高いので、2,940円のこの商品を購入して満足されちゃったら困るなって(笑)。あと、安いのであまり効果がないと思われないか心配しています。しかし、ちゃんとノウハウを詰め込んであるので安心してください!
──本日はありがとうございました