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2006年8月30日(水)

「CEDEC2006」開幕!スク・エニ和田社長が「日本のゲーム業界の今後」を語る

 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(略称:CESA)が主催するゲーム開発者、および業界関係者向けカンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006(以下、CEDEC 2006)」が、本日8月30日より開幕した。

 「CEDEC 2006」は本日~9月1日の3日間にわたって、プログラミングやゲームデザイン、ビジュアルアーツ、サウンド、モバイル、プロデュース、ビジネス&ロウ、ネットワークといった8つのジャンルのセッション、ラウンドテーブルなどを実施。セガの名越稔洋氏や植村比呂志氏、クローバースタジオの稲葉敦志氏、神谷英樹氏、ベックの芝村裕吏氏、ディースリー・パブリッシャーの岡島信幸氏といった著名なゲームクリエイターらも講師として登壇が予定されている。
 初日となった本日は、スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏による基調講演「日本のゲーム業界の今後」が行われた。

 和田氏はまず、資料として欧州、北米、日本における2001年~2005年の家庭用ゲームソフト市場規模推移を示したグラフ(経済産業省「ゲーム産業戦略」より)を公開。この資料によれば、ワールドワイドにおける市場は年平均15.4%の割合で成長を続けているが、欧米と比較すると日本の占める全体的な割合は上昇していない。これについて和田氏は、「このグラフでは、日本の相対数の低下ばかりがクローズアップされているが、家庭用ゲームに関しては日本が先進国であり、2001年にはすでに浸透していた。欧米の家庭用ゲーム市場は1999~2000年以降、急速に発展しており、映画や音楽などに負けないエンタテインメントとして定着している。ゲーム産業のマーケットは世界規模で拡大しており、ジャンルや地域を考慮するとまだまだ成長する余地がある。現状では市場の縮小という“量的な危機感”ではなく、“質的な危機感”を持つべき」と話す。
 さらに国内ゲーム市場の現状については、2004年以降より携帯電話用ゲームやPC用オンラインゲームといったジャンルが伸びている他、多くの女性ユーザーがゲームに興味を示しているという結果を踏まえ、「さまざまなデバイスを通じて多くのユーザーにゲームコンテンツが届いており、潜在顧客数が多く存在する」と指摘。このような観点から、先に述べた“質的な危機感”について「ライフスタイルが多様な世代に向けて、クリエイターはそれぞれ対応する工夫が必要。市場が“質的な変化”を意識しなければいけない」と再度現状の問題点を強調した。

 続いて和田氏は、“質的な変化”を意識するうえで、クリエイターはゲーム固有のものだけでなく、さまざまな実用的な分野でも活躍する場があるとし、実写映画のCGコンテ制作にあたるプリビジュアライゼーションをはじめ、オンラインサービス、シリアスゲームといったゲームの他産業への適用事例を挙げる。
 スクウェア・エニックスでは、シリアスゲームの開発・販売において学習研究社と業務提携を結ぶなど、すでにゲームシステムの応用に取り組んでいる。和田氏はシリアスゲームに関して、「ユーザーと関わり、ユーザーが直接判断してレベルアップしていくといったゲームの本質そのものが学習素材として非常にすぐれており、教育研修ツールとしては最強。今後、ゲームが教育の現場に入っていくことはじゅうぶんにありうることだと思う」と話しており、この分野でのさらなる展開に期待を寄せていた。

 今後の展望としては、「この20~30年をかけて、ゲームはすでに産業として確立しており、さらにユーザーを増やす第2の成長段階へと移行している。そのために質的な変化に迫られており、時代認識を共有することが業界全体の飛躍につながる」とし、現状の問題を正確に把握し、確認することが非常に重要だと業界に呼びかける。
 また、「あくまで例」としながら、ゲーム産業が第2の成長段階に向けて今後取り組むべき課題として、ハードのスペック向上による開発ツールの共有化、異業種とのコラボレーション、ユーザー参加型コンテンツへの取り組み、マルチコアプロセッサへの対応、産官学の連携などを挙げ、「CEDEC」などの場でクリエイターの中で問題意識を高めて欲しいと語った。

 最後に和田氏は、「日本のゲーム産業は世界をリードする役割も担っているが、もっと大きな使命があるのではないかと思う。これだけインターネットが普及し、端末のスペックも高く、さまざまなメーカーのコンテンツを駆使しているユーザー数が多い地域は、世界中でも日本以外はない。こういった環境から、次世代のインフラを主体としたサービスにおける最大の実験場は日本であり、そのサービスをリードしていく立場のゲーム産業はもっとも先進的な産業ではないかと思う。痛みをともなう変化も受け止め、みんなでがんばっていきましょう」と、集まったクリエイター、業界関係者らにエールを送り、基調講演は終了した。
「CEDEC 2006」基調講演01

「CEDEC 2006」基調講演02
和田氏の基調講演で幕を開けた「CEDEC 2006」。基調講演は、立ち見も出るほど多数の受講者が出席していた。
「CEDEC 2006」基調講演03

「CEDEC 2006」基調講演04

「CEDEC 2006」基調講演05
基調講演の冒頭では、和田氏が「家庭用ゲームソフトの世界市場規模推移」をはじめ、「日本国内におけるゲーム産業の市場規模推移」や「ユーザーの家庭用ゲーム参加状況、および参加意向」などのグラフ資料を公開し、“質的な変化”を意識すべきという現状の問題点を指摘した。


データ

■「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」開催概要
【開催期間】2006年8月30日~9月1日
【場所】昭和女子大学(東京都世田谷区)
【受講料】「レギュラーパス(3日間有効)」CESA会員」:25,000円、一般:50,000円/「デイリーパス(いずれか1日のみ有効)」CESA会員:10,000円、一般:20,000円

■関連サイト
「CEDEC 2006」
社団法人コンピュータエンターテインメント協会