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2005年3月1日(火)

「AOGC」2日目、コーエー・松原氏による「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」

 昨日2月28日と本日3月1日の2日間にわたって開催されている国際オンラインゲーム・カンファレンス「アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC) 2005」。2日目となる本日も興味深いプログラムが多数用意されているが、ここではコーエー執行役員の松原健二氏による特別公演「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」の模様を紹介していく。

 冒頭で松原氏は、北米で80万本、韓国や欧州でも25本以上の販売本数を記録する米Blizzard Entertainment社のPC用MMORPG『World of Warcraft』を紹介。「『World of Warcraft』はMMORPGで初めて世界を総なめにしたタイトルだと思うが、日本ではあまり人気がない」と話し、地域性の違いや異なるマーケットにおけるオンラインゲーム展開の難しさをわかりやすく提起した。
 続いて、ワールドワイドのオンラインゲーム市場におけるアジア圏のウエイトを、スクウェア・エニックスの2004年度中間期決算資料を使って説明。同社の代表MMORPGといえば、中国と台湾で1,600万人の会員数を誇る『クロスゲート』、日米欧で55万人の会員数を獲得している『FINAL FANTASY XI』の2タイトル。2004年度通期のオンラインゲーム売上高は約140億円と予想されており、2004年度中間期における海外売上高の構成比は、日本69%、北米24%、欧州4%、アジア圏3%となっている。売上高を地域別に見るとアジア圏は6億2,800円となり、松原氏はワールドワイドで占めるアジア圏のウエイトはビジネス的にはあまり大きくないと指摘する。

 これらの状況をふまえて松原氏は、中国、台湾を中心としたアジア地域のオンラインゲーム市場について特徴などを説明し、アジア地域でのオンラインゲーム展開のポイントをいくつか挙げた。松原氏によれば、「中国ではパッケージゲームソフトの海賊版が出回っていることから、ゲーム市場はビジネスとして成り立たないとされていた。しかし、オンラインゲームは海賊版が主流だった中国のゲーム市場を変化させ、まっとうなゲーム市場ができつつある」という。また、日本人はゲーム内容やビジュアルがゲームの評価につながるが、中国では大がかりなプロモーション展開やオフラインイベントなどでユーザーに印象付けを図るため、日本と比べるとゲーム性への評価が小さいように感じられるとのこと。アジア地域の長所としては「オンラインゲームの人口が多く、ユーザー数の拡大が見込めること」、「ゲーム性やビジュアル面に富む競合が少なく、差別化が図りやすいということ」、一方短所は「ユーザー単価が日本の半分であること」、「販売管理費のウエイトが大きいこと」などを挙げている。

 アジア市場への展開については、第1段階としてパートナー企業と提携するなど現地の運営方法を学び、第2段階として現地子会社による自社展開に移ることが望ましいのではと述べている。松原氏は、コーエーが中国市場をターゲットとしたシンガポール子会社設立を発表した点についても触れ、「スクウェア・エニックスはアジア圏での自社展開に向けて中国で子会社を設立するなど、すでに第2段階に進んでいる。コーエーもオンラインゲームを開発するメーカーとして追いつかないといけないし、他のメーカーさんも一緒に行きましょうといいたいところ」と話した。
 またアジア市場に学ぶこととして、「アジア地域のオンラインゲーム市場は世界規模でいうと、それほど大きくない。加えてゲーム開発の技術や歴史を考えると、やはりゲーム先進国は日・米・欧だと思う。オンラインゲームは規模の拡大が利益を生むということから、1地域だけの成功を目指すのではなく、グローバルをターゲットにしたゲームデザインがカギを握る」とまとめている。

 後半ではグローバル展開を視野に入れた、コーエーのオンラインゲーム戦略を紹介。『信長の野望 Online』や『大航海Online』、『真・三國無双BB』といったコーエーが開発・運営しているMMOタイトルの特徴がそれぞれ説明された。
 松原氏はグローバル展開において、「企業・タイトルブランド」、「ゲームデザイン」、「パートナーシップ」の3点を重視。「『FFXI』のヒットは、すでに確立された“FFブランド”の影響が大きいと思う。人気映画やキャラクターといったブランドをいかした展開は、オンラインビジネスにとってもはや不可欠。『真・三國無双』などのコーエータイトルは海外でも認知を得てきているので、これをいかしてどんどん展開していきたい」と語り、講演を締めくくった。

『信長の野望Online』プロデューサーなどを務める松原氏。特別講演では、中国、台湾市場を中心とするオンラインゲームの海外展開について見解が述べられた。

年末に拡張版が発売され、順調にユーザー数を伸ばし続けているという『信長の野望 Online』。2005年内に中国、台湾での展開が予定されている。

正式サービスが間近に迫った『大航海Online』は、人と争うことがメインではなく、プロセスを楽しむことをメインに制作したとのこと。

講演では、『大航海Online』の登録アカウント数の推移をグラフで公開。クローズドベータテスターの募集やクライアントソフトのダウンロードなど、ユーザーのアクセスがどの時期に集中するのかが具体的にわかり、「いい経験を積ませてもらった」ということだ。

2006年サービスインを目指し、開発中の『真・三國無双 BB』は、家庭用ゲームの爽快感がそのままオンラインで楽しめることがコンセプト。高速ブロードバンドによるレーテンシ(クライアントから中央サーバーまでデータが到達する時間)をフル活用させる技術が搭載される。

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■関連サイト
「アジアオンラインゲームカンファレンス 2005」公式サイト
ブロードバンド推進協議会