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2005年2月28日(月)

オンラインゲームの発展に向け「AOGC」開幕。スクウェア・エニックス和田社長が講演

 本日2月28日より、都内工学院大学にてブロードバンド推進協議会が主催する「アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC) 2005」が開幕。本日はスクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏による基調講演が行われた。

 「AOGC 2005」には、国内のオンラインゲーム開発者や、中国、韓国の研究者らが講演者として出席。本日と明日3月1日の2日間にわたり、アジア地域のオンラインゲーム産業をテーマにした22のセッションが実施される。

 和田氏の基調講演のテーマは「スクウェア・エニックスのオンラインゲーム戦略について」。「オンラインゲームについて語ることは、ゲームの本質について語ることと同じ。ゲームデザインは、コミュニティデザインと言っても良いのかもしれない」と冒頭で話し、さまざまなデータの紹介を交えながら、オンラインゲームのこれからについて語った。以下にその内容を紹介していく。

■オンラインゲーム市場におけるスクウェア・エニックスのポジション

 和田氏が初めに触れた話題は、海外を含めたオンラインゲーム市場でのスクウェア・エニックスのポジションについて。スクウェア・エニックスは、日米欧で『FINAL FANTASY XI』のサービスを展開しているだけでなく、中国ではPC用MMORPG『クロスゲート』を販売し、世界中で多くのユーザーを獲得している。
 同氏は、中国の盛大社、韓国のNCsoftという2つのオンラインゲームメーカーとスクウェア・エニックスのオンライン事業における収益報告をグラフで比較。ネットカフェでのプレイが中心の中国市場の特殊性などを紹介した上で、「一言で“オンラインゲーム”とくくっても、国によってマーケットの特徴が異なる。きちんとした統計がないので比較しづらいが、かなり健闘していると思う」とコメントした。

■スクウェア・エニックスのオンラインゲーム事業戦略

 続いて和田氏は、スクウェア・エニックスのオンラインゲーム事業戦略を解説。「ネタバレになるので、あまり詳しい内容を話すことはできません(笑)」と会場の笑いを誘った同氏は、「収益モデル」と「PlayOnlineの考え方」という2つのテーマについて語った。

 オンラインゲームにおける収益モデルは、クライアントディスク販売と定額課金による「コンシューマ型」、従量課金による「アーケード型」に加えて、それらに付随する「デリバティブ型」の3タイプに分けられるという。「デリバティブ型」とは、キャラクターやアイテムの売買により収益を得るというもので、和田氏は「このデリバティブ型で収益を出す場合には、ゲームデザインの段階でそれを想定しておかないとユーザーが当惑してしまう。デリバティブ型はあくまで派生であって、ゲーム本体を壊すものはあるべきではない」と語り、ゲームにあわせた収益モデルの重要性を強調した。

 また、スクウェア・エニックスの総合的なネットワークサービス「PlayOnline」については、「マルチプラットフォーム」「マルチコンテンツ」「マルチカントリー」という3つのキーワードを用いて解説。和田氏は「ノートパソコンや携帯電話の進化によって、ユーザーが端末を選ばずにコンテンツにアクセスできるようになってきている。これからは、ユーザーが求めている価値がどこにあるかを考えてコンテンツを設計していかなければならない」と語った。

■オンラインゲーム事業に内在する課題

 講演の最後に置かれたテーマは、オンラインゲーム事業が直面するであろうさまざまな課題について。「ネットワーク社会に内在する問題が、一番早く現れるのがオンラインゲーム」と前置きした上で、和田氏は「文化的課題」と「制度的課題」の2つに着目した。

 オンライン上でのマナーや、情報の扱い方(情報リテラシー)といった「文化的課題」については、研究者の間でも積極的な議論が交わされている。和田氏は「的確な指導を行える指導者がいない」ことなどを問題点に挙げ、「ヒステリックに議論をしても仕方がないこと。真面目に取り組んでいくしかない」と続けた。
 さらに、知的財産を一例として紹介した「制度的課題」については、「問題の“根っ子”の所から話し合っていかないと、オンライン産業全体の発展が阻害されるのでは」とコメント。オンラインゲーム市場を含む、ネットワーク産業の未来に警鐘を鳴らし、講演を締めくくった。



「AOGC 2005」では、オンラインゲーム開発者や、大学研究機関の代表者らが講演を行う。明日3月1日には、コーエーの松原健二氏の特別講演も予定されている。





パッケージゲームとの比較を交えつつ、スクウェア・エニックスのオンライン事業への取り組みを解説した和田氏。これから10年間のゲーム業界について「プレイヤー同士のコミュニティが求められる価値になっていくのでは」と語った。


データ

■「アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC) 2005」
【開催日時】2005年2月28日~3月1日
【開催場所】工学院大学(東京都新宿区西新宿1-24-2)
【主催】ブロードバンド推進協議会

■関連サイト
「アジアオンラインゲームカンファレンス 2005」公式サイト
ブロードバンド推進協議会