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2005年1月11日(火)

『ドラクエVIII』制作秘話が多数飛び出した!堀井氏&日野氏の特別講演

 1月10日、コンピュータ専門学校「デジタルエンタテインメントアカデミー(以下、DEA)」主催、スクウェア・エニックス共催の特別講演イベント「ドラゴンクエストVIIIへの道」が都内某所で行われた。

 この講演は、ゲームクリエイターを目指している人を対象に企画されたもので、300万本以上の販売本数を誇るシリーズ最新作『ドラクエVIII』の制作に携わったゲームクリエイターの堀井雄二氏、レベルファイブ代表取締役の日野晃博氏の2人が出演。イベント冒頭で挨拶を行ったDEA学長の平野雅一郎氏によると、2004年度のDEA入学式で行われた日野氏と堀井氏による対談がきっかけで、この特別講演が実現したとのことだ。また講演の前には、DEAの運営にも関わっているスクウェア・エニックスの役員、スクウェア・エニックスやレベルファイブに入社して活躍しているDEA卒業生らが登壇。DEAの魅力や開発現場での体験、印象などが語られ、来場者たちは熱心に聞き入っていた。

 本イベントの目玉となる堀井氏と日野氏の対談では、『ドラクエVIII』の開発会社を決定するプロトタイプ(試作品)の依頼時からソフト発売にいたるまでの制作秘話を披露。ゲームクリエイターを目指す人だけでなく、『ドラクエ』ファンにとって興味深い話題が多数飛び出した。
 日野氏はプロトタイプ制作当時を振り返り、「依頼をもらったのは、ちょうど他のゲームタイトルを作っている真っ最中。しかも年末時期でこれから休暇に入るという時だったが、“休暇をつぶしてでも『ドラクエ』を作りたい”とスタッフに話して制作を決意した。『ドラクエ』に関わる重大さを感じながら、“これで堀井さんにダメと言われたらあきらめよう”というくらい、約2週間全力をつくして、楽しんでプロトタイプを制作した」と話す。レベルファイブが制作したプロトタイプは、すでに3Dグラフィックで表現されていたそうで、堀井氏は「プロトタイプを見た時は、すごいと思った。ファミコンの時から、3DグラフィックでRPGを表現したいと思っていたので、ついに夢が実現したという感じ」と当時の感想を語った。堀井氏は、『ドラクエVIII』の制作において3Dで表現された見た目にも触発されたそうで、「本当に冒険をしているようだったので、今回はストーリー的にはシンプルにした。シナリオは絞り込んでいるが、たくさん寄り道ができるようにした」と明かした。

 『ドラクエVIII』の制作は、堀井氏のシナリオ、鳥山明氏のキャラクターデザイン、すぎやまこういち氏の音楽など、レベルファイブの外のものを取り混ぜて、すごいものを作るという意識で開発に取り組んだという日野氏。「『ドラクエ』シリーズを全部遊んで、その魅力を知っているつもりだったので、レベルファイブの技術を使ってこういうことができるというネタを堀井さんに渡していった。『ドラクエVIII』に関して言えば、堀井さんの世界をより広げるために、レベルファイブが持っている技術やアイデアを出して、堀井さんのゲームを作る手伝いをするという意識を持っていた(日野氏)」と、これまで手がけたRPGタイトルとは、まったく異なる意識で制作に挑んでいたと語った。

 “『ドラクエ』らしさ”やシリーズの魅力について、2人は「自分ではあまりわからないけど、『ドラクエ』は常に真剣にプレイしなくていい、のんびりした雰囲気や暖かみ、わかりやすさを念頭に置いて制作している。そのあたりを合わせたところがこのシリーズらしいところなのかな(堀井氏)」、「鳥山先生がデザインしたキャラクターも魅力の1つだと思ったので、アニメ「ドラゴンボール」などで動きを徹底的に研究した(日野氏)」とコメント。日野氏は実際に開発する際に「テンポの良さ」を重視したそうで、「ロード時間などをすごく気にして、戦闘シーンもこれまでの作品に近いものにしようと、魔法を発動させる効果音から敵にヒットするまでの時間をストップウォッチで測ったりもした」という制作秘話も聞くことができた。

 また、話は今後の『ドラクエ』シリーズにも及び、堀井氏は「とりあえず、もう1度3Dでやりたい。『VIII』も非常によくできているが、この作品からもう少し引っ張ってやってみたい」と、次回作でも3D表現のおもしろさを追求したいという意思を表明。これを受けて日野氏も「まだまだ3Dの『ドラクエ』でやれることがたくさんある。『VIII』の延長線上にあるアイデアを盛り込んでいきたい」と語った。

 最後に2人は、「頭の中にある作品はどんなものでも傑作。そのアイデアをどのように形にして実現していくかというスキルやセンスを身に付けていってほしい(堀井氏)」、「僕はゲーム業界が発展を続けて、映画産業を超えるものになると思っている。新しい若い人が活躍できるチャンスだと思うので、一緒に次世代のゲームを作っていきたい」と未来のクリエイターたちにメッセージを送り、対談は終了。盛大な拍手で講演会は締めくくられた。

講演には、DEA入学予定者をはじめ、ゲームクリエイターを目指す人たちが集合。用意された席は隙間なく、びっしりと埋まっていた。

DEA学長の平野氏は挨拶で「入学式で行われた堀井氏と日野氏の対談では、新入生たちが非常に感銘を受けた。本日の講演もゲームクリエイターを目指す方々に、夢と希望と勇気を与える内容となるだろう」と述べた。

現役のゲームクリエイターとして活躍しているDEA卒業生たち10人も登壇。「学生の頃よりも今のほうが勉強している」、「自分が作った映像がゲームショウで動いているのを見てこの仕事を選んで良かったと思った」など、体験談を披露してくれた。

DEA入学式の対談がきっかけで実現したこの講演イベント。『ドラクエVIII』制作にまつわるさまざまなエピソードを聞くことができ、非常に濃い内容のものとなった。

『ドラクエ』シリーズのファンであるという日野氏は、「シリーズ最新作が日々仕上がっていく姿を見て、作りながらワクワクしていた」と開発時を振り返る。

堀井氏は今後についても触れ、「子どもの頃にゲームをプレイしていた人たちが大人になり、『ドラクエ』のプレイヤーも年齢層が上がっている。その人たちが年をとって老人になってもゲームをやっていると思う」とコメント。


■関連サイト
デジタルエンタテインメントアカデミー
『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』公式サイト
スクウェア・エニックス