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2004年5月13日(木)

宮本茂氏大いに語る!「E3」初日終了後に任天堂が記者発表会を開催

 現地時間5月12日(日本時間5月13日)、E3初日終了後に任天堂がマスコミ向けの記者発表会を行った。このステージには、宮本茂氏をはじめとする開発スタッフが登場し「ニンテンドー・ディーエス」と『ゼルダの伝説』のコンセプトや成り立ちについて語ってくれた。以下に宮本氏の発言を大ボリュームの2部構成にして紹介していこう。

記者発表会ではまず、宮本氏、手塚卓志氏、紺野秀樹氏の三人が登場し「ニンテンドー・ディーエス」のコンセプトなどを解説した。


■第1部「ニンテンドー・ディーエス」編
●制作環境の変化について
 「最近はすごく快適に仕事をしています。実は去年から開発の体制を変えて、明確なプロデューサー制にしてやっていこうとしているんですね。とくに最近は2ndパーティのタイトルがものすごく増えてきて、ぼくはいままでそれらをぜんぶ見てたからすごい数になってたんですが、これからは体制を変えて1stパーティ(任天堂)の作品だけに集中することにしました。「ディーエス」の『スーパーマリオ64×4』などのソフトはぼく自身が直接手がけています」

実機を手に取りながら、「ニンテンドー・ディーエス」の開発秘話を語る宮本氏。


●「ニンテンドー・ディーエス」のコンセプト
 「パッと見は「ゲームボーイ」だけど、ぼくらはこれを「ゲームボーイ」じゃないと思って作ってます。据え置きでも携帯でもない“第3の柱”と呼んでいます。いままでのハード開発は、新しいものを作るといいながらも、やはり高性能化に向かっていたんですね。でもそろそろその進化の形を一回見直そうと考えまして。コントローラに関しては、ハードが変わるたびに新しいものを作っていたんだけど、今回は本体そのものを新しいジェネレーションに持っていこうということです。これまでやってきたコネクティビティなどの新しいチャレンジも全部このハードに詰め込んでいます。通信についてもいままではお客さんがケーブルとかいろんなものを買わなあかんというめんどうなことがあった。だからそれも全部詰め込んだ。ディーエスはマイクも内蔵しているんですが、マイクでゲームを作りたいというアイデアが会社の中にたくさん溜まってきているんですよ」

●ゲームをやらない人も同じように楽しめる
 「ゲーム業界の抱える問題として、ゲームをしない人がすごく多くなってきているという事実があります。ゲームをする人としない人がはっきり分かれてしまって、ゲームをしない人は「ゲームってむずかしいんでしょ」というイメージを持っているんですね。でも昔はマリオがぴょんとジャンプするだけでみんなうれしかった。だから今回はそんなふうに、普通の人がはじめて触ったときに触感でおもしろさがわかるようなものを作りたかったんです。それでタッチパネルに注目しました。だから「ディーエス」は、ゲームが上手な人も遊んだことがない人も同じスタートラインで楽しめる可能性があります。この機械というのは据え置き型でも作れなかったし、「ゲームボーイ」でも作れなかった。過去のゲームでは作れなかったソフトをいっぱい作れるハード。だから“第3の柱”と呼んでいるんです」

●ディーエス=デベロッパーシステム
 「実際にいままでゲームを作ってきたクリエイターの人たちがみんな魅力を感じてくれていて、すぐにこれをやりたいと言ってくれてます。例えばナムコの社内では以前から『Pac-Pix』というゲームのアイデアがあったけど、適正なハードがなくて出せなかった。だから「ディーエス」の話をしたら、すぐやりましょうと言ってくれたんです。うちのスタッフも元気にゲームを考えて、どんどん作ろうという意欲がわいているところです。2つの画面を使わなければいけないと思う必要は全然ないし、通信機能もマイクも使わないといけないというわけではない。タッチパネルで遊ぶゲームでなくてもいい。ディーエスというのは、どのシステムを使うかをデベロッパー(開発者)が自由に選べるハードなんです」

●E3に出展しているソフトについて
 「今回のE3で展示しているソフトはどれも遊べる時間が短かったと思うんですが、これはあくまでショー用で、できるだけ短いデモをたくさんの人に触ってもらおうということです。いまのゲームの世界は触らなくてもわかるものがすごく評価されてるとぼくは思います。でも「ディーエス」のゲームはインタラクティブなものだから、実際に触ってみないとおもしろさがわからない。だからポリゴンが何個出るかとか色が何色出るかというようなPRはしません」

■第2部『ゼルダの伝説』編
 「ニンテンドー・ディーエス」に関する話題のあとは、ゲームキューブの新作ソフト『ゼルダの伝説』について。こちらは宮本氏とプロデューサーの青沼英二氏、2人での会見となった。

 新作『ゼルダの伝説』は、宮本氏が監修、青沼氏がプロデューサーを務めている。「ゲームの全体を見ていて、ちゃぶ台返しをするくらいにチェックはしてます」という宮本氏の言葉に青沼氏が苦笑する場面も。


●リンクのグラフィックの変化について
 「(前作からキャラクターデザインが大きく変わったのは)そうしてほしいというユーザーさんがたくさんいたから、というのもひとつの事実です。『風のタクト』を作ったとき、「子供時代のリンクがいちばん活き活きした動きをする、ではその動きにいちばん適した表現は? 」というところで、あのトゥーンシェイドが生まれたんですね。GCで独特の世界を作りたいというのもひとつの理由でした。でもその当時から「16歳になったときのリンクの絵はどうしよう」ということが開発側の課題だったんです。それで『タクト』の制作が終わってからいくつものモデルを作ってみた。それで『時のオカリナ』のリンクがいちばんイメージに近いという結論に行き着いて、今回のデザインになりました」(宮本)

「『ゼルダ』は18年前から同じようなアイデアを何度も使ってる。それは必要なことですが、謎解きなどについても次はもっとユニークなものを入れていきたいと思っています」とのこと。今度の『ゼルダ』には新しい挑戦も多数盛り込まれそうだ。


●デモムービーはすべて実際のプレイ映像
 「今回公開した『ゼルダの伝説』の映像は、すべてプレイアブルのROMから撮影しています。実際に人間がプレイしている状態をデモとして撮っているという、開発の進行状況もそういう状態です。あと『オカリナ』を作ったときから宮本は馬に乗ったまま剣で戦いたいと言っていたんですが、今回やっとそれができるようになった。そういう意味でもリンクは成長してると思います」(青沼)



 宮本氏が「ニンテンドー・ディーエス」と『ゼルダの伝説』にかける情熱が、記者団にも十分に伝わってきた任天堂発表会。どうやら今年も任天堂から目が離せない年になりそうだ。
 なお、発言中に出てきた『ゼルダの伝説』のE3版のムービーはこちら(任天堂公式サイト)で見ることができる。


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